道路工事に負けた鉄道(陸羽西線の運休)を見に行く

JR東日本

鉄道建設や鉄道の高架化などの工事の際、道路が通行止めになることはよくあります。しかし、道路建設のために鉄道が休止するという冗談みたいなことが実際起こってしまったので、その現場を覗きに行くお話しです。

運休の概要

陸羽西線は山形県内の新庄から余目を結ぶローカル線です。全通したのは1914年(大正3年)とかなり古いです。ということで線路の規格は古いですし、特にトンネルは掘り直していないはずなので大正時代のままです。
昔は急行が走っていましたが、今はただのローカル線です。御多分に漏れず、乗客の減少は顕著です。
しかし、路線は松尾芭蕉も奥の細道で句を詠んだ、最上川に沿っており、とても景色の良いところです。

この陸羽西線と並行して、新庄酒田道路が建設されています。その一部区間である高屋道路というものが建設されていますが、道路建設により、大正時代に作られた陸羽西線のトンネルの強度に影響を与えるということで、2022年5月14日より2024年度中の道路工事終了まで、全線で陸羽西線は営業休止になっています。


ちなみに、陸羽西線は43kmの距離を走りますが、トンネル一つの工事のために、全区間運休させています(途中折り返しとかは考えなかったのだろうか?)。
そして、その間代行バスが走っています。


2024年度中の再開、ということは、2025年の3月再開かな?というように思っています。

余目駅からスタート

余目駅は羽越本線と陸羽西線の乗り換え駅です。羽越本線を走る特急いなほが全便停まる主要駅です。乗客もそこそこいます。

余目駅は国鉄時代からの駅。駅舎は大きい

代行バスのバス停は駅前にあります。

代行バスは新庄・余目間で下り11本。上り10本。そのうち2本が快速。
酒田まで行くのは上下5本ずつ。他に余目発酒田行きが2本あります。

代行バスは基本的に鉄道の駅に停まります。しかし、鉄道の駅が国道・県道と離れていたりすると、停留所は離れたところに設置されます。一方で、鉄道の駅ではないところでは、いくら集落があったとしても停車しません。

一方で、鉄道駅が国道や県道の目の前にあることは少なく、結果として国道・県道から横道というか市町村道に入って駅前に入って停車することになります。ということで、必然的に国道・県道での右左折が多くなり、所要時間は鉄道よりもかかります。まあ、最高速度も鉄道よりバスの方が低いので、同じ距離でも遅いのですが。。。。

代行バスで駅前にいたのは、JRバス東北の高速バスタイプの車体。代行バスは、地元のバス会社のバスも総動員して運転しています。正直に言って、陸羽西線のディーゼルカーよりも、高速バスタイプの方が座席は良いです。

JRバス東北の高速バスタイプの車両

なお、代行バスに乗るためには「切符」が必要です。青春18きっぷでも乗れます。JR東日本パスとか、その手の類のものも全部使えます。

ここから、新庄駅まで向かいます。なお、代行バスは陸羽西線の駅に入っている場合もあれば、入っていない場合もあります。

途中駅の清川駅

余目駅から3つ目の清川駅。清川駅は国道から離れていますが、駅前にバス停があります。駅の待合室がそのままバスの待合所に使われていました。

駅舎の脇には花が植えられていました。

駅の待合室の中は入れますが、ホームの中には入れません。立ち入りが制限されています。
見てご覧の通り、草ぼうぼうになっています。

別のアングルから撮影してみました。「絵になる」という気がしますが、絵になったとして「寂寥感」ですので、うらびれた感じがします。すすきの穂が伸びているのがなんとも言えない感じです。

こちらは、運休1年前の清川駅。草ぼうぼうではありません。この時、朝の便に乗ったのですが、乗客はそこそこいました。バスになるとどうなるのでしょうかね。所要時間が列車よりもかかりますし。

2021年8月に撮影

代行バスは快速と各駅停車があり、快速の所要時間は58分。各駅停車は1時間29分の所要時間です。

休止前の陸羽西線の列車は片道9本。上りの各駅停車は最速47分。上りの快速は新庄・余目間に2駅停車で40分なので、やはり代行バスは時間がかかります。
この時間差が、乗客数にどのように影響するのか、気になるところです。

工事現場を見に行く

ここが、陸羽西線運休の理由となっている、高屋道路建設現場。国道47号線の脇から撮影しています。真ん中より少し右側、緑の丘の上に白いものが見えると思います。これが高屋駅の駅名標です。高屋駅は高台にあります。
茶色い鉄骨の上の部分に陸羽西線の線路があります。

道路トンネルは道路と同じ平面に建設されて、道路トンネルの上部と陸羽西線のトンネル下部が3mしかありません。陸羽西線はできて108年経って老朽化が進んでいるため、運休になりました。

この区間のためだけに、陸羽西線全線を運休にするのは、やはりどうかと思います。

古口駅

駅は国道を曲がった先にありました。かなり新しめの駅です。駅舎内を撮影し忘れましたが、綺麗でした。お手洗いも整備されていて、田舎のローカル線にしては手が入っているな。という印象を受けました。

代行バスは駅前まで来ます。駅の待合室には入れましたが、ホームには立ち入ることができません。ホームを外から少し見てみましたが、清川駅ほど草ぼうぼうにはなっていませんでした。

津谷駅

津谷駅は駅前に代行バスが来ません。結構離れた県道沿いにバス停があります。500mくらいはバス停と駅が離れていました。駅の周りには、そこそこ家が建っています。

このアングルで撮影すると、今にも列車が来そうな気がする

こちらの駅の待合室の入り口が木で塞がれていました。バス停が遠いので、この駅の待合室を利用することはないから。というのが理由だと思います。

陸羽西線 1987(昭和62)年の時点で2185人を越えていた輸送密度(1日1kmあたりの平均乗車数)は、2020年には163人になり、30年超で93%減少しました。
この数値は、JR東日本の中では、奥羽本線新庄・湯沢間、津軽線、磐越西線に次いでワースト4位。
県都山形に直通しなくなったのが大きいのではないかと思います。

山形新幹線の乗り入れも、山形県が乗り気ではなく、2021年に期成同盟が解散。線路はコンクリート枕木になっているので、高速化ができなかったのか・・・と思います。

切なすぎる踏切

こちらは、新庄駅近くの国道458号線下西山踏切。

すでに遮断機が既に外されていて、かなり切ないです。
遮断機があると、踏切が現役だと勘違いされて、踏切前一旦停止をする車が出るからだと思いますが、それにしても、運休したら踏切の遮断機も撤去してしまうというのは、いささかどうかと思います。

以上が、陸羽西線の訪問記です。

2024年度中に、本当に陸羽西線は復活するのでしょうか?かなり不安になりますが、現在米坂線もストップしており、この線が復活しないと、日本海側の新津から秋田まで、内陸に行く鉄道がなくなってしまいます。是非とも、復活してもらいたいものです。


復活したら、是非最上川沿いの絶景を見に来たいと思います。

【参考】
東日本旅客鉄道株式会社 ホームページ並びにプレスリリース